移行期の技術・土と作物ができるようになるまで①
サステナブル・アグリカルチャー by 湘南オーガニック協議会
2020.1.4(土)
もし、自分が新規就農者だったり、すでに農業をやっていて、
新しく周りの農家さんから土地を借りてオーガニックを始めようとした時のことを想像してみてください。
新しく土地は借りた、資金が豊富にあるわけではない、初年度からしっかりと収入を上げていきたい・・・
どんなアプローチをとっていこうと思いますか?
これは、比較的よくあるケースです。
今回は、土ができ作物ができるようにまるまでの移行期に対処技術として、できることを考えていきたいと思います。
当然、以前の使用者から圃場の最低限の使用履歴をヒアリングするのはもちろん、土壌の物理性・化学性の診断もかけるとして、とにかく、初めての土地はわからないことだらけな状態。
ビギナーズラックで思った以上にうまくいってしまうこともあるかもしれません。
もしくは、その場の畑の育土が進んでいない場合、キャベツなどをいきなりオーガニックで作ろうとした場合、
ほぼ、間違いなくキャベツなどの葉物なら虫だらけになったり、逆に育たなかったりするかもしれません。
育土の項でもお話ししましたが、比較的よい土とは
土に作物を栽培するための基礎的な機能が整っていること(化学性・物理性・生物性)
そして、栽培する作物と土壌の生態系の親和性が高まって、作りやすくなること。
こういった状態になるまでには、多少時間がかかります。
農家さんの中には、何か、被覆資材のようなものをかけることも自然ではないという方もいるようで、
2~3年の間、収入にならないのを我慢するというケースもあるようです。
こだわりすぎたことによる離農に至るケースもたまに聞きます。
これは、生き方や考え方なので無理にとは言いませんが、
お勧めするのは、土ができてくるまでの移行期間中は、積極的に作物が育つのを助けてあげましょうということです。
まだ土も未熟で作物を健全に育てる生態系が整っていない場合は、人が手助けしてあげて育つのを手伝っていこうという考え方です。
また、農家自身も、生きていかなければいけません。しっかりと農業の業としてなりたつような技術体系を組むことをおすすめします。
■移行期の技術って?
【1】作物を育てることが育土につながる
何かの資材を投入することだけが育土ではありません。
その土で、作物を育て続けることで作物にあった土壌生態系に変化していく。
とにかく、栽培期間中に最後までしっかりと育ててあげることが、作物にあったその場の自然をくみ上げることになります。
ですから、育土初期の時には、積極的に人が補ってあげて、作物を育て上げることで育土を進めていきます。
【2】人が積極的に守る
●プロ農家であれば
プロはとにかく経済性も重視して栽培を考えたほうが良いと思います。
育土をすすめるのは、もちろんのこと、例えば、初期のキャベツなど葉菜類の場合、BT材などの有機JASSでも認定された葉面散布の資材があります。
積極的にそういったものを活用して
栽培していくことをお勧めします。何度もいいますが、作物をその場で作ることが、育土につながります。キャベツは自ら根を伸ばし、キャベツの好む生態系を自分の周りに生み出していきます。そのお手伝いを農家はしていきます。
■栽培サポート資材・技術・作物を使う
①被覆資材を使う
サンサンネットなど
飛来してくるタイプの虫を防いでいきます。特に、葉菜類は初期に虫害にあうことが多いです。
播種のタイミングや定植のタイミングでネットで覆ってあげると初期の弱い時期を守ってあげることができます。
キャベツや白菜など大きくなる作物もできるだけぎりぎりまで被覆しておいてあげるときれいな状態で収穫できます。
ただ、本当に生態系ができていない時には、覆っていたとしても虫にやられることになります。それに関しては、人が食べるものではないということかもしれません。
②生育を促進するためのマルチの利用
(1) 黒マルチなども積極的に利用しましょう。
特に、高炭素の資材を分解してくれるのは、微生物や小動物です。温度を確保することで循環を促進する働きをします。
例えば、定植の直前にマルチを張るのではなく、ある程度、前に張っておき、温度をかけておくことで、土壌生態系の循環を促進していく効果を狙っていくこともできます。
特に秋口や冬場、春先にかけては、通常は多めの施肥をして補いますが、
土壌生態系の養分循環を高めることで育てていこうというコンセプトに基づいたアプローチをかけるのであれば、積極的に黒マルチなどを使っていくことをお勧めします。
(2)透明マルチの利用:陽熱プラスをつかう
・透明マルチをつかった太陽熱土壌処理を積極的に使うのもありです。
土壌の病害虫を殺すという目的ではなく、高炭素の有機物を投入したのであれば、積極的に温度をかけることにより
土壌生物の活性化をはかり、土壌の深層の部分までの団粒化を狙っていきます。
③微生物資材の利用
自作の資材でも、安価で培養しやすいものだとEMなどでもいいです。
納豆菌をミキサーで砕いて葉面散布するとか。作物の生育をたすけてあげれれるものを選んで使いましょう。
(別の項目で書く予定あり)
④生物農薬
有機JASSなどで認められている生物農薬を適宜使用する。
キャベツなどにBT材など積極的にプロの農家に関しては、移行期に積極的に利用するのも手だと思います。必要なくなったら、回数を減らすか、使用をやめていけばいいと思います。
⑤自然農薬
自然の食品などを使った民間で使われる防除方法。それほど、劇的な効果は期待できませんが、
サポート資材として活用するのはありなのではないかと思います。
主に、家庭菜園の方にお勧めします。
例 木酢液・にんにく・とうがらし・ストチュー(酢と焼酎をまぜたもの)・コーヒー・
牛乳・石鹸など
⑥コンパニオンプランツ
育てる作物と相性のよい作物を積極的に使っていきます。きゅうりの株もとにネギを植えたり、
トマトの株もとにニラなどを植えたりと、根圏微生物の相性の良いものをうえることもあれば、キャベツとレタスなどを混植したりもします。
そうすることで飛来する虫の忌避効果がでるようです。作物の栽培を助ける一つとして使っていってはどうでしょうか。