栽培技術ータマネギの栽培方法
サステナブル・アグリカルチャー by 湘南オーガニック協議会
2019.12.7(土)
【はじめに】
タマネギのたんじゅん栽培は比較的簡単にできるようになります。
タマネギは肥料をあげると大きくなるが、その分、腐りやすくなる。保存期間も短くなります。
肥料を直接すわせるのではなく、微生物による養分循環で玉ねぎをつくると、違いを感じるのは、料理をつくる主婦(夫)。
まず涙がでない。もしくは、出にくくなります。
生でかじってもすごく甘く、水にさらさなくても、食べられるあまーいタマネギになります。
もちろんそういう状態の玉ねぎは腐りにくく、長期保存にも向きます。年々連作をかけていくと作型が安定していきます。
【基本的なアプローチは?】
基本は、一気に微生物が生み出す養分循環量をあげていくアプローチをしていくこと。
養分循環量が上がった畑の玉ねぎとたんじゅんに転換中のまだまだ養分循環が十分でない畑を比べると、玉ねぎの甘さが違います。
特に生で食べると十分でないほうは、辛みが強いです。
循環量があがった畑の玉ねぎは、本当にあまい。フルーツのようなタマネギ。
フルーツは言いすぎかな(笑)
また、プロの農家さんで、手間をかけないで機械化の体系を組みたいときは、緑肥の利用をお勧めします。ここでも玉ねぎと緑肥の組み合わせの紹介をしたいと思います。
小規模の畑ならば、溝切りしてチップ詰めしたうえで、緑肥と太陽熱の組み合わせで循環量をあげてから作ると比較的短期間でに、味の良い玉ねぎが栽培できます。
■原産地
北西インド、タジク、ウズベク、天山西部地域などの中央アジア原産。
紀元前3200~2780年にエジプトのピラミッド建設の現場でも大量の玉ねぎを食用に利用していたと記録されている。
■来歴
日本には、江戸時代に長崎にはいったものの、鑑賞用にとどまり、
食用としては、明治4年(1871年)に北海道に導入され、1878年、札幌農学校の教官ブルックスにより本格的な栽培が始まりました。北海道、大阪、兵庫県などで主に栽培され、食の西洋化と共に全国に広がっていきました。
■作型 秋・冬作
■おすすめの品種
タキイが多いですが、私が使っていたものを中心に紹介しています。悪しからず・・
極早生 マッハ(タキイ)
早生 ソニック(タキイ)
中生 O・K黄 O・P黄(タキイ) 貯蔵力にすぐれ、12月末までの吊り貯蔵が可能で、品質は上々
中晩生 ネオアース(タキイ)
晩生 もみじ3号(七宝)
セット球 シャロム(タキイ)
赤玉ネギ・・・猩々赤(タキイ)・・赤玉ネギでかつ保存性も高い。
■事前の圃場の用意
◎物理性を整える
まず、物理性を改善するために、暗渠や明渠などは整えておきます。サブソイラーなどがあれば事前に入れて耕盤を破ります。さらに緑肥を作って、できた切れ目に根を伸ばしてもらい、根による根耕を進めます。
必要であれば溝などを切りチップなどを詰めて透水性・排水性の改善、同時に生物性を増すような準備も進めます。
育土に時間がかけられるようであれば、緑肥と太陽熱処理を利用して育土をすすめておきます。
基本的にソルゴーがしっかりと大きく育つようであれば、それを循環させて玉ねぎの栽培も可能です。
圃場が小さく手がかけられる場合は、溝切りチップ詰めからのソルゴーなどの緑肥栽培、太陽熱処理という流れを踏んで玉ねぎの栽培につなげると養分循環がまわるので、育ちやすくなると思われます。
■緑肥を利用した栽培 (プロ農家か、機械のある方におすすめ)
参考事例を示しておきます。ご自身のもっている機械などによっても、具体的なやり方や、もっと
楽な方法があると思います。工夫してみてください。
【作型】 秋冬作
【使用緑肥】 えん麦 ソルゴー クリムソンクローバー
【おすすめ品種】 えん麦(ヘイオーツなど) ソルゴー(つちたろう・スーパーシュガーソルゴーなど) ライムギ(R-007)
【早生玉ねぎ+緑肥2作(ソルゴー・エンバク)の連作体系】
10月下旬~中旬に玉ねぎ定植なので、その1か月半~1か月前くらいまで緑肥を栽培する。ソルゴーだけでは、作付までに間があるので、えん麦を続ける
もしくは、比較的小規模の畑であれば、ソルゴーの栽培を引っ張って、えん麦の代わりに太陽熱処理などをかけるのもあり。
早生玉ねぎ ⇒ ソルゴー ⇒ えん麦 ⇒ 早生玉ねぎ
●栽培手順
①玉ねぎ収穫(4月初旬~5月初旬) ⇒ 耕起
タマネギの出来を見て、炭素資材、堆肥、米ぬかなど必要に応じて追加して、ソルゴーが育つように微調整。
②ソルゴー播種(5月初旬)
③乳熟期~登熟期前にソルゴー鋤き込み モアがけ+浅耕起 10㎝の深さに鋤き込み。好気性の環境で微生物を繁殖させるのが狙い。
④2週間後、2回目耕起 15㎝の作土層全体に鋤き込む。
⑤1~2週間熟成期間
⑥えん麦播種 播種前に雑草が出てるようなら軽く起こす。
えん麦播種後 表層3㎝耕起(覆土)
⑦9月中旬~10月初旬 えん麦 鋤き込み(1回目 浅耕起)
⑧2週間後 2回目耕起(深さ15㎝)
⑨マルチ張り 穴あきのマルチでない場合は、雑草の心配がないので
極力早めにマルチを張って地温を確保しておくと、定植後の活着が良い。
穴あきマルチの場合も1週間前位には、張っておくと、微生物層が安定するので良いと思われる。
【中生・晩生玉ねぎ+緑肥2作 連作体系 】
●栽培手順
①6月中旬 玉ネギ一斉収穫 ⇒ソルゴー播種 ⇒モア耕起 ⇒えん麦 ⇒11月中旬~12月初旬 玉ネギ定植
時期は違うが手順は緑肥作付例1に準ずる
【緑肥をつかった栽培のポイント】
ソルゴーのすきこみのタイミングがあまりに遅くなると、炭素率が上がり耕起の際に扱いにくくなることもある。乳熟期頃には、鋤き込むと扱いやすい。その後、えん麦をもう一回、播種して玉ねぎにつなげてもよい。えん麦の炭素率が低ければ、えん麦鋤き込み時に、廃菌床や葉っぱなど主体の炭素資材などを追加して鋤き込むと養分循環が持続すると思われます。(炭素資材は、もみ殻、竹パウダーなど地域で無料もしくは格安ではいる資材を使ってみてください)
地力がないと予想される圃場であれば、ソルゴー栽培前に堆肥などを施用します。
持続的な養分循環を生み出す目的で炭素の投入するようであれば、ソルゴー播種前に、堆肥と炭素資材を入れておく。
チッソ飢餓がおこらず、ソルゴーが育つように調整する。ソルゴーの根が投入した炭素資材に絡んで、玉ねぎの栽培時に糸状菌などが取り付いていれば、玉ねぎの栽培期間にも養分供給がなされてくるので育ちやすくなると思われます。
また、初期は、うまく微生物の循環が回っていないことも多く、その場合は、緑肥の鋤き込み時に、さらに炭素資材の追加、そして、米ぬかなどの微生物の餌となるものを追加して、太陽熱処理をかけると、微生物の循環が上がってきて、作物が作りやすくなってきます。
※ タマネギのコンパニオンプランツ
また、コンパニオンプランツ好きの人は、クリムソンクローバを圃場周りや畝間に播種しても良いです。
バンカープランツとして天敵を住処になります。アブラムシやスリップスの害から守ってくれます。空気中の窒素を固定し、生育を促進します。数年、連作して栽培が安定してくるとコンパニオンプランツも必要なくなくなると思います。
【玉ねぎ⇒ トウモロコシ⇒ 玉ねぎ の連作体系】
●バージョン①
【玉ねぎ収穫後⇒炭素資材投入+米ぬか+太陽熱マルチ ⇒トウモロコシ(8月播種)⇒玉ねぎ】
太陽熱マルチのための、透明マルチがけの労力がかかるので、作付面積が大きくない場合にお勧め。もしくは、まだ、養分供給が初期の土壌構造を発達させるための処理。
●バージョン②
【早生玉ねぎ⇒スイートコーン(4月下旬~5月初旬播き 7月下旬収穫)⇒えん麦⇒タマネギ定植】
ある程度、微生物の養分供給が回るようになったら、この組み合わせもあり
養分がたくさん循環しているところが好きなスイートコーンがしっかりとできるようになったことを確認してから選択してください。
スイートコーンを緑肥とみなし炭素源の確保と考えるなら、堆肥ORぼかしなどの追肥で育て、収穫終了後は、トウモロコシ残渣に炭素源を追加してえん麦⇒タマネギにつなげるのでもいいと思います。
施肥で育てるのではなく、微生物の循環が生み出す養分で育つというコンセプトを頭にいれて組み立てるといいのではないでしょうか。
■栽培手順
①極早生・早生タマネギ収穫
②4月下旬~5月初旬 スイートコーンの播種
③7月下旬ごろ スイートコーン収穫
④スイートコーン残渣+米ぬかなど+炭素資材 を追加して鋤き込み
⑤8月中旬以降~ えん麦播種
⑥えん麦生育(8月中旬~9月下旬)
⑦えん麦鋤き込み+炭素資材
⑧早生タマネギの定植(10月下旬~11月中旬)
※中生・晩生の場合は、えん麦を定植前の一か月くらいまで引っ張ってもよい。
【早生玉ねぎ ⇒ サツマイモ の連作体系】
■栽培手順
①早生玉ねぎ収穫(4月初旬~5月初旬)
②サツマイモ定植(黒マルチを張る) 5月初旬~
畝間にマルチ麦を播種してもよい。雑草対策とセンチュウ対策・後作の有機物補給をかねて
③サツマイモ収穫 8月中旬~
④収穫後、炭素資材の投入 チップなどの炭素資材のほか、まだ養分循環がまわっていない畑であれば、廃菌床や竹パウダーなど、または、米ぬかなどを合わせてすぐに養分循環が回るように調整しておく。
⑤地温確保による養分循環をすすめるために、穴あきマルチでない場合は、すこし早めに黒マルチを張っておく。
養分循環が不十分の畑で、かつ小規模の畑の場合、手間をかけられるようなら、太陽熱処理をして、黒マルチをはるのでもいいし、穴あき黒マルチを張った上から、太陽熱処理のための透明ビニールを張っておくと養分循環の促進につながると思います。
⑥玉ねぎ定植(10月下旬~11月中旬)
【その他の作付例】
玉ねぎ⇒枝豆
玉ねぎ⇒オクラ
玉ねぎ⇒かぼちゃ
玉ねぎ⇒すいか
その他、いろいろと試してみてください。基本は、同じ作付体系で連作が組めると年々、作型が安定してきて、収量、秀品率ともに上がっていきます。