微生物を生かした育土⑤ー太陽熱を活用しよう!
サステナブル・アグリカルチャー by 湘南オーガニック協議会
2019.8.31(土)
■陽熱プラス
みなさんは、太陽熱土壌消毒という方法をしっていますか?
通称で何種類か呼ばれ方があるようですが、例えば、太陽熱処理、太陽熱マルチとか同じことを表しています。
ちなみに、太陽熱土壌消毒は、臭化メチルなどの薬剤による土壌消毒の代わりに、1976年ごろから、奈良県のいちごの施設栽培などで利用が始まった物理的な消毒技術で、施設栽培では、有効な事例が多くあり、路地でも慣行農家さんの間で利用されてきた有用技術です。(ちなみに、臭化メチルは2012年に使用禁止になりました。)
具体的なやり方としては、ハウス土壌などで作付終了後に、土壌を透明ビニール資材で覆って、熱をかけることにより、土壌病害虫を殺してしまう方法です。
太陽熱土壌消毒というと病原菌の対策に使われるイメージや、薬剤での殺菌・殺虫を太陽熱によって可能にする技術というような印象があるかもしれませんが、
最近では、「陽熱プラス」という呼び方も出てきて、病害虫対策だけでなく、健全な土づくりにも使える栽培体系として考えられるようになってきています。
最近、たんじゅん実践者の中でも透明マルチを使った陽熱プラスの技術を組み合わせることで、成果を早く上げる農家さんが増えてきました。
従来からの効果プラスアルファーで使われるようになってきています。
■従来からの効果としていわれている代表的なもの
・連作などによる土壌病害虫対策
・抑草・除草効果
・窒素の無機化・リン酸の可給化
■また、それ以外に、たんじゅんさんの畑で観察されることは、
・土壌の深くまで棒がはいるようになる
・水はけの改善
・土壌の団粒構造が発達する
・投入した炭素資材、主に高炭素のチップなどに糸状菌などまわりりやすくなってくる。白い糸状菌がまわりを覆うようになってくる
そんな効果が観察できる畑が多いです。
先日、陽熱プラスの研究発表会に参加した折、上記のような、「畑で観察できる効果が、なぜ起こるのですか?」と
会を主催していた農研機構の研究者に質問したところ、まだ、検証されていないので、理由を明確にこたえることが出来かねますとの回答でした。
たんじゅんの農家さんの場合、多くの場合は、高炭素資材、例えば、木材のチップや落ち葉、葉っぱ、もみ殻、廃菌床などを使用します。または、緑肥などでも、できるだけ炭素率をあげるように出穂後や乳熟期から登熟期になってから、すき込みをします。
たんじゅんを始めたばかりの時は、微生物の活性化も上がっていない状態なので、微生物による分解が進まず、土を観察してみても、たんなる木材や高炭素の資材のままでのこっているケースが多いです。
そして、短くて半年、長くて2年くらい経つと、目に見えるような形で、糸状菌が発生し、例えば、チップなどのような炭素資材も白い糸状菌でコーティングしてしまうような状態になってきます。
糸状菌をはじめとする微生物が高炭素資材にとりついて、そこからはじめて養分化がはじまり、植物が使える養分を供給していくのではないか?
その一連の循環を回していくことが重要となってくる気がしています。
研究者が、土壌深部の微生物の調査についてはやったことがないので、検証できていないとうことなので、以下は、たんなる仮説にはなると思うのですが、
高炭素資材を入れた畑で、太陽熱処理をすることにより、土壌表面の微生物の量は一旦少なくはなるものの、その後、いれた炭素資材が糸状菌などに取り付かれることが多くなることから、微生物の活性化が進んでいきます。
表面の微生物が活性化することで、ドミノ倒しみたいな感じで、なんらか、連動して下層の微生物の活性化につながり、その結果、太陽熱処理後には、今まで深くまで刺さらなかった棒が、1m以上、深いところだと1.5~2mほど刺さることになるのではないかなと。
そういう状態が起こると、作物の生育スピードや、味、出来ばえも明らかに良くなっていきます。
仲間の畑では、何十年も放置されていた畑や、慣行農家さんから借り受けた畑、場所や畑の状態は異なるものの、半年から一年の間、炭素資材の投入及び、緑肥、陽熱プラスなどの一連の育土を行うことにより、劇的に作物の出来が良くなってきています。
■上記は渡辺さんの初めて2年目の畑でできた、ニンジンとネギ。画像わかりにくいけれど、良品がざくざく取れてます。
高炭素資材の投入と緑肥作付、そして陽熱プラスの一連の処理を合わせることにより、以前の炭素資材や緑肥だけの投入の時よりも、かなり早い段階で微生物の循環が促され、良質な作物がとれるようになってきているように思われます。