微生物をいかした育土②ー具体的な手順
サステナブル・アグリカルチャー by 湘南オーガニック協議会
2019.8.10(土)
□ 炭素資材を使った育土のコツは「火のつけ方と同じ!!」
薪を使って火をつけることを想像してください。
みなさんも、キャンプなどの体験があると思いますが、
いきなり、マッチをすって、大きな薪に火をつけようとしても燃えうつらないですよね?
それよりも、燃えやすい新聞紙から始まって、小枝、少し大きな枝、薪と段階を踏んだほうが、スムーズに火は大きくなります。
土壌の微生物を活性化させるのも同じことが言えます。
大きな薪にあたるのは、高炭素でしかも大きくて荒いチップなど。
それをいきなり土に混ぜても、微生物さんが食べることできない、薪でいうところの火が付かない状態。
土の状態にもよりますが、そのような高炭素の資材でも、1年から2年くらいの期間を置けば、糸状菌などが周りにとりつき、養分を生み出していく状態になりますが、その状態になるまでは、おそらく、土の中に入れるとチッソ飢餓のような状態を起こします。そこで育てれば、作物は育たないか、小さいままで終わります。その期間は、作物ができなくなってしまう。農業者としては、これでは生きていけない。
ましてや、土壌消毒などで微生物の数が減少している畑を受け継いだ場合には、火にあたる微生物がいないので、なおさら時間がかかる。
農家としては、できる限りショートカットで作物ができるように土壌生態系の状態を整えたい。
そこで、まず、紙に火をつけるように、燃えやすいというか、微生物が食べやすい状態の炭素資材。つまり細かく粉砕されたチップ、葉っぱ主体の炭素率の比較的高すぎない細かいチップ、CN比40以上の緑肥など。竹を細かく粉砕したものなどを利用して、微生物の循環を生み出すように設定します。
このとき、必要なら、初期には、微生物が利用できる餌(チッソ源)としての米ぬかやぼかしなどを少量用いていきます。
また、耕作放棄地や山を切り開いて造成した土には、微生物の数がすくないので、必要なら牛糞たい肥や馬糞などを少量施用して、元の微生物の数を増やしておきます。
それと、火をつけるときにもそうですが、空気が必要ですよね。ちゃんと空気が入ってくるようにかまどを作ったり、薪を配置していかないと、たとえ火が付いたとしても消えてしまう。
微生物君もそうです。炭素を分解するために必要な菌は、基本的に空気が好きな子が多いので、物理性の悪い畑では、必要に応じて、サブソイラーを入れる、暗渠や明渠を掘る、溝を切るなどの下準備は必要です。
とにかく、まずは、数を増やします。
炭素を分解する糸状菌にはじまり、ありとあらゆる発酵菌・腐敗菌・古細菌・・・・など、とにかく菌の数をまず増やします。
一旦、火が付き始めて来たら、今度は大きな薪に火をうつしていくと、火が長持ちしますよね。それと同じように、
一定の微生物が繁殖していいる環境が整ってくると、高炭素の資材をいれても、それにとりつくスピードがましているので、比較的スムーズに炭素資材を養分化することができるようになってくる。
大体、3年くらい炭素資材を投入していくと、あとは、作物を継続的に作っていくだけで、ほぼ無投入や少量の投入で作物ができてくる畑に変わってきます。
ここまで来たら、常に作物を作り続けながら、様子を見ながら炭素資材を投入するかしないかを判断していく段階になります。
何を植えてもできてしまう状態になっています。
作物を作ることは、一見収奪のように見えますが、実は、作物も土の生き物たちに様々なものを供給しています。
植物は、光合成により作った10~30%くらいのエネルギーを、根を通して土壌生態系に供給しています。根からアミノ酸などの形で放出して、ミネラルを溶かしだして、それを吸収したり、そのアミノ酸が微生物の餌になり増殖がはじまったり、または、根自体が微生物や小動物の餌にもなります。根からは、古くなって剥離した組織などは、微生物君たちの格好の餌になります。
「一方的に奪うのではなく、与えながら与えられてより豊かな生態系をつくりだしています」
■具体的な育土の手順
前提:物理性が良いところは、生物性もよいケースが多い。
よって、物理性の良しあし、化学性の良しあしでのパターン分けを考えてみたい。
ケースを想定して、それにたいするアプローチのしかたの仮説をのせてみました。
あくまでも仮説なので、ご自身で検討して実践してみてください。